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Antonin Dvořák
2018/07/04ガラ・コンサート(7/5) 曲目解説を掲載

7/5(木)ガラ・コンサートの曲目解説を掲載しました。演奏会の前に、どうぞご覧ください。

Program Notes
ガラ・コンサート(講師室内楽コンサート)
7/5(木)横浜みなとみらいホール・小ホール

■R.シュトラウス:弦楽六重奏のためのカプリッチョ Op.85

19世紀後半から20世紀中盤にかけ、大規模な編成の交響詩やオペラなどを次々に発表。オーケストラから豊穣な響きを引き出すことにかけては天下一品で、指揮者としても活躍したリヒャルト・シュトラウス(1864年生・1949年没)。19世紀には多くの名作交響詩を、20世紀に入ってからは次々にオペラ/楽劇を発表しており、その最後のオペラとなったのが 1942年に初演された『カプリッチョ』だ。

このオペラは、ウィーンで活躍したアントニオ・サリエリ(モーツァルトのライバルとして有名になった宮廷音楽家)のコメディ風オペラ『最初に音楽、次に言葉』をヒントにしており、R.シュトラウスはウィーン生まれの名指揮者クレメンス・クラウスらと共同で台本を作成。伯爵夫人をめぐって恋のライバルとなった音楽家や詩人が「音楽か、言葉か」と議論を戦わせる場面から物語は始まる(あとはいろいろな人が登場しての恋愛ドラマとオペラ談義)。 お聴きいただく「弦楽六重奏のためのカプリッチョ」は、オペラの導入部として演奏される「前奏曲」から、そのまま第1幕の冒頭へと流れていく音楽。R. シュトラウスらしい美麗なメロディ、繊細に変化するハーモニー、複数のメロディが絶妙に綾をなす様子などが味わえる。

■モーツァルト: クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756 年生・1791 年没)が生きた18世紀後半は、クラリネットにとっての発展期にあたり、名手といわれる演奏者も登場してきた。ウィーンに住んでいたモーツァルトが、由緒ある宮廷オーケストラのクラリネット奏者だったアントン・シュタードラーと懇意になれたのは、(現代の私たちにとっても)幸運だったといえるだろう。彼との出会いにより、1789 年9月に完成したこのクラリネット五重奏曲や、クラリネット協奏曲(イ長調、K.622)ほか、一連のクラリネット関連作品が生まれたのだから。

この曲は、シュタードラーが考案し、低音部の安定した演奏を可能にしたというバセット・クラリネットを想定して書かれたと考えられている。その低音部の太い響き、流れるような高音部の旋律などは、シュタードラーがいかに名手であったかを証明するものだ。曲は4つの楽章で構成されている。

第1楽章:イ長調、ソナタ形式。夢見るような第1主題に導かれ、独奏クラリネットが早くも幅広い音域のパッセージを披露。第2主題は第1ヴァイオリンが提示し、独奏クラリネットがほの暗い雰囲気でその旋律をリレーする。
第2楽章:ニ長調、三部形式。晩年のモーツァルトらしい、天国的な雰囲気をもつ音楽。まるで「この楽器は、かくも多彩な表情を生み出せるのだ」と宣言しているようでもある。
第3楽章:イ長調、2つのトリオをもつメヌエット。明るい主部、陰りのある第1のトリオ、主部の再現、やや不安げな第2のトリオ、主部の再々現と続く。
第4楽章:イ長調、変奏曲形式。可愛らしい雰囲気の「主題」と、それに続く6つの変奏から成る。

■ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 Op.48

 アントニン・ドヴォルザーク(1841年生・1904年没)は室内楽の分野でも多くの傑作を残しており、彼のメロディ・センスが光る作品も多い。1878年5月に、わずか半月ほどで書かれた弦楽六重奏曲もそのひとつだ。30代の後半、作曲家としてはすでに多くの作品を発表して充実していた時期である。しかし一方で家庭内では、3人の子供を相次いで亡くし、それでも新しい娘が生まれたという激動の時期でもあった。

同じ年には4手連弾曲またはオーケストラ曲として知られる「スラヴ舞曲集(第1集)」も作曲。生まれ故郷であるボヘミア(現在のチェコ中西部)ではすでに名声を得ていたものの、広くヨーロッパ各地で名前と作品が知られてきた時代にもあたる。音楽からも「意気揚々」という空気が伝わってきそうだ。曲は4つの楽章から成る。

第1楽章:イ長調、ソナタ形式。牧歌的な雰囲気も感じられる、まさにドヴォルザークらしい(やや土臭い)第1主題で始まり、舞曲風のリズムが強調される第2主題も加わる。
第2楽章:「ドゥムカ」 ニ短調、ロンド形式。スラヴ(ウクライナ地方)特有の民謡がもとになった、哀愁を感じさせる音楽。
第3楽章:「フリアント」 イ長調、三部形式。激しく強いリズムによって踊られ、演奏されるボヘミアの舞曲。同時期に書かれた「スラヴ舞曲集」にも、フリアントのスタイルは生きている(第1集第1番、など)。
第4楽章:「フィナーレ」 イ長調、変奏曲形式。やや憂鬱な雰囲気で始まる「主題」と、それに続く6つの変奏。最後は躍動感にあふれる舞曲風の終結部へ。

文:オヤマダアツシ(音楽ライター)

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