NEWS

猿谷紀郎
2018/07/12猿谷紀郎・新作 タイトル決定&解説掲載

7/15(日)、7/16(月祝)オーケストラ・コンサートで世界初演となる、MMCJ委嘱新作のタイトルが決まりました。作曲者による解説もあわせてご覧ください。


■猿谷紀郎:エウレカ (MMCJ 委嘱作品/2018、世界初演)
Toshiro Saruya: EUREKA (Commissioned work by MMCJ/2018, World Premiere)

先日物理学者のホーキング氏が76歳で亡くなりました。今回の作品は彼を悼んで書かれたものです。氏の業績はここに記すまでもないことですが、量子重力論、量子宇宙論に留まらず、日々激しく変化している現代の我々の生活の、極めて近い未来に関しても、大きい影響を与える可能性がある重要な指針を示したことが、第一の偉業と言えるかもしれません。ガリレオ・ガリレイの丁度300回目の命日である、1942年1月8日に生まれ、2018年3月14日に亡くなった氏の人生を辿るように、曲は進みます。21歳のALS 発症、特異点定理発表、32歳のホーキング放射発表、33歳のピウス11世メダル受賞(ローマ法王庁)、51歳の無境界仮説、65歳の無重力経験、67歳の大統領自由勲章、と音楽はそれぞれの小節ごとに微妙に変化していきます。ただし曲自体が彼の心象を表すということではなく、あくまでもそれぞれの節目として音が変わっていくという意味です。超弦理論と一般相対性理論と素粒子理論の数式の関連を調べる際に現れたとされる完全数496が曲全体の拍数になっています。小節数は76となります。

マテリアルとしては氏の誕生日と命日の「数」が音程として表されていて、タイトルは氏がブラックホールの面積定理に考え至った際に、それが自分にとっての「エウレカ」であったと語っていたことから選びました。

文:猿谷紀郎


>>「オーケストラ・コンサート」その他の曲目解説はこちら



Profile/猿谷紀郎(作曲家)
Toshiro Saruya, Composer

慶応大学卒業後、ジュリアード音楽院に留学、同大学院を終了。パーシケッティ、ヘンツェ、ナッセンの各氏に師事。これまでに、クーセヴィツキ音楽財団・フェロウシップ賞、ミュンヘン・ビエンナーレ・BMWミュージックシアター賞、第3回芥川作曲賞、第3回出光音楽賞、尾高賞(95年、06年)を受賞。04年音楽を担当した大阪イシハラホールでの公演「三井の晩鐘」が第4回佐治敬三賞を受賞。サントリー芸術財団主催のTRANSMUSIC(03年大阪)及び、サントリーホールにおける「作曲家の個展」(08年)でオーケストラ作品が特集された。2016年8月には、鼓童創設35年を祝った<鼓童とオーケストラのための作品「紺碧の彼方」>が初演される。第62回伊勢神宮式年遷宮の奉祝曲<交響詩「浄闇の祈り」>が3度目となる第62回尾髙賞を受賞。他に芸術祭大賞、優秀賞など受賞。09年より6年間NHK・FM「現代の音楽」の司会を担当。

MORECLOSE

Page Top